真実と邂逅

4/10
27837人が本棚に入れています
本棚に追加
/672ページ
「俺も少し焦ったなー。さてどうしようかなって考えてたら、思い出した。アイツの能力を」 ジークの能力により十年もの間、拘束され続けたゼノにとって、彼の魔力の構成は既に熟知していた。 そこでゼノは自身の魔力を変換し、彼の魔力、つまり能力自体を生成することを試みた。 「簡単に言えばアイツの能力を真似して、一日前の傷の無いお前の体をその場に転送させた。そこから完全に死ぬ前に霊魂だけを移し替えた」 このことによりウルの体は一日前のもの(現在の体)と傷を負って使い物にならないもの(国家機関により回収され死亡が確認された体)の二つが存在することとなった。 「いやー、初めてだったけど上手くいっちまったんだよね、これが。まあ今は完全に霊魂と体が馴染んでない状態だから多少動きは制限されてるかもしれねーけど。でもここで数か月休養すれば完全に馴染む。なんたって俺が作った体じゃなくて、元々お前自身の体だしな。感謝しとけよー」 ゼノの言葉を受けてウルは改めて自分の体を見つめた。 確かに足の感覚は無いが、それでも自分の体なのだと思うと少し安堵した。 「ありがとうございます。それと、あのー……もう一つの俺の体ってどうなってんすか?」 「いや、その場に置いてきた。まあ同じ体が同じ時間軸に二つ存在するのはこの世界の矛盾となるからな。たぶん一週間もすればあっちの体は自然と消滅するだろ」 一週間……。 もしあの戦いのあとすぐに自分の体が回収されていたならば、頃合いによっては自然消滅するよりも火葬などで処理されてしまう方が早いかもしれない。 ――つまり、俺完全に死んだことになってますよね。 「ふわぁーあ。まあそう言うことだから。だいぶ説明してやったし。そろそろ俺眠るからな」 「あ、あの!」 目を擦りながら部屋を出ようとしているゼノを、ウルは慌てて呼び止めた。 もし自分が死んだとなっているとしたのなら、あの子達は今この瞬間も絶対に苦しんでいる。 すぐに帰れないとしても、なんとか自分が生きているということぐらいは伝えなければいけない。
/672ページ

最初のコメントを投稿しよう!