真実と邂逅

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「おいおいもう勘弁してくれ。ついでに、さっき言ったアイツの能力を真似してお前の体を転送させたのは成功出来たっていったけど。実は誤算もあったんだって」 ゼノはもう完全に面倒だと言わんばかりに、大きなあくびをした。 「俺の魔力ぜーんぶ持ってかれちまった。空っぽだ。一度の術の生成だけで、ありえねえだろ。自慢じゃねーが俺の魔力量って限りなく無限に近いものなんだぞ。まあ、そんだけアイツの能力が特別だったんだろうねー」 ゼノの言葉にウルは息をのんだ。 「だから正直今の俺はかなり弱いからな。もちろんワルキューレの一人と勝負しろだなんて言われたら俺は5秒と持たず殺される。たぶん幹部の中じゃ一番弱いかもしれねー、ははっ」 ゼノはそう言って笑った後、気付いたようにミアを指さした。 「あっ、でもミアだけには負けないな。たぶんコイツ幼児にも負けるから」 「むっ!そ、そんなこと……あるかもです。って私戦いなんてしないです!」 ミアは耳を立たせたり、くたびれさせたりしながらゼノへ詰め寄っていた。 「だからわりぃな。魔力足んねーから寝むたくてしょうがない。まあ、元あった量に戻るのはいつに何のかわかんねーけど。だけど一応今年中にこの世界消滅させるってノイラージャックが、俺のフリして言っちまったらしいから……なんとかするしかねーわな。ふわーあ、そいじゃあ」 ミアを適当にあしらいながら、ゼノはそう言った。 「本当に……俺なんかを助けて良かったんですか?」 ウルは小さな声でそう言った。 ゼノはその声に少しだけ考えたように俯いた。 「まっ、それがわかるのはこの戦いが終わった後だろ。だから精々俺とアイツの期待を裏切らないようにしとけ」 だがすぐに、ニヤリと冗談めいた笑みを浮かべた。 ゼノのその言葉の意味を、ウルは知っている。 知っているからこそウルは、去っていくゼノに対してもう何も言えなかった。 「はあ、こりゃ完全敗北だ……」 ゼノが部屋からいなくなった後、ウルはそんな独り言を呟いた。 自身との心の持ち様の違い。いわば器の違いを見せつけられてしまった。 ――敵は強大にしてくせ者。まさに最強。 しかしそこにこそ戦う意味がある。 ――これから始まる生活が、後のウルにとって大きな影響を与えることなど言うまでもない。
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