27836人が本棚に入れています
本棚に追加
/672ページ
カレンは数人の隊員に抱えられるようにその場から引き離された。これ以上今のウルの姿を見ては、この少女の精神はいよいよ持たないかもしれないと隊員達は思ったからだ。
「リリス、大丈夫……」
ワルキューレの一人であるリリス・アインシュベルンはその声に小さく頷いた。
だが目は虚ろであり、何日も泣きはらしたのかその目の周りは既に腫れていた。
そんなリリスの体を支えながら一歩づつゆっくりとウルの元に近づくのは、彼の上官でもあり対策室副室長であるレビア・ライトローズであった。
レビアの顔色もひどく悪い物で、それだけでここ数日の彼女がどれほどまでに自分自身を追い詰めていたのかがわかる。
眠るようなウルの姿を確認したレビアがまず思ったことは
『綺麗にしてもらったんだね』
という意外なものだった。
彼女とワルキューレの一人であるルナシアだけは、三日前に既にウルの遺体をその目で確認していた。
その際のウルの顔は、土や血で汚れており思わず目を背けたくなるものだった。
それに比べて今のウルの顔はすごく綺麗で……本当に今にも起きてしまいそうなくらいだ。
レビアは泣かないと決めていた。自分には泣く権利がないと思ったからだ。
今回こんな結果になってしまったのは、上の命令も知らずに行かせてしまった無能な自分のせいであると責任の全てを自分の物だと感じていた。
だがウルのその姿は、今のレビアの心を折るのには十分だった。
「あぁ……ウル……くん」
今にもいつもの笑顔で自分の名前を呼んでくれそうな気がして、一瞬本当にただ眠っているだけなのではないかと期待する。
だが、即座にそれはもう永遠に訪れることは無いのだと自覚する。死んだのだ。私の部下であるウルムナフ・ハートバレインはもう死んでしまったのだ。
何もできなかった……私。無能だ、私は。部下を守るどころか死なせてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!