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15時間程前のことである。
平八郎は出張で名古屋に来ていた。
午前中に取引先との商談を終わらせた平八郎は、あとは昼食を挟んで支社に立ち寄って挨拶をして帰社するだけだった。
平八郎は大通りから裏路地に入り、喫茶店を探した。
どんなに都会でも、一本小路に入れば雑居ビルだらけの場所は多い。
そして雑居ビルには大抵その街の雰囲気にあったテナントが入っているものだ。
ここは都心部に近いので、飲み屋・喫茶店・食堂などがあるはずだ。が、平八郎はそれを見つけた瞬間童心が蘇り、心が躍った。
こんなにワクワクした気持ちになったのは何年振りだろうか……。
平八郎が見つけた店の名前は『ゲームショップ鳴鈴増孝』。
出入り口の上の、ビニール布と鉄パイプで出来た庇に、古臭いアレンジのポップ体でそう書いてあった。
漢字には“なれましたか”と振り仮名が振ってある。
さらに今時珍しい自動化されていない引き扉と、店頭の少しサビた看板があの頃の――少年時代の平八郎の記憶を呼び覚ました。
「昔は人気シリーズの新作の発売日に並んだっけ……」
扉の取っ手に手を掛けながら懐かしい気持ちに浸る平八郎。
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