Lv.0 下

2/9
668人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
 平八郎は辺りを見回した。 窓は自分が入った後に鍵を閉めたままになっている。 玄関の扉はその前に妻の円香が閉めていた――完全なる密室。 「はい?」 どこからツッコんでよいのか分からない疑問が、そのまま2文字に変換されて口からこぼれ落ちた。 「我が名は魔王ソーマなり!」 「とりあえず一人称を統一したまえ」  平八郎は自称ボスさんにそれだけ言うと台所へ向かった。 そしてお茶を淹れるためにお湯を沸かし始めた。 無論もてなすつもりなどない。 茶筒から茶葉を取り出し、それにこっそり睡眠導入剤を混ぜた。  寝ている間に所持品検査をして身元を暴いてやる……! 彼の頭の中ではその後に警察に通報を入れ、妻の浮気調査を探偵に依頼する所までシミュレーションされていた。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!