668人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
平八郎は辺りを見回した。
窓は自分が入った後に鍵を閉めたままになっている。
玄関の扉はその前に妻の円香が閉めていた――完全なる密室。
「はい?」
どこからツッコんでよいのか分からない疑問が、そのまま2文字に変換されて口からこぼれ落ちた。
「我が名は魔王ソーマなり!」
「とりあえず一人称を統一したまえ」
平八郎は自称ボスさんにそれだけ言うと台所へ向かった。
そしてお茶を淹れるためにお湯を沸かし始めた。
無論もてなすつもりなどない。
茶筒から茶葉を取り出し、それにこっそり睡眠導入剤を混ぜた。
寝ている間に所持品検査をして身元を暴いてやる……!
彼の頭の中ではその後に警察に通報を入れ、妻の浮気調査を探偵に依頼する所までシミュレーションされていた。
最初のコメントを投稿しよう!