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「ただいま。……あ、起きてたのか、なんでドア開けてくれない、の……?」 「平八さん今何時だと思っ……オープニング明けみたいに繰り返してどうするとね!」 平八郎に小声で怒鳴りつけたのは、妻の円香(マルカ)であった。  時刻は午前3時、同アパート内の住人は誰一人として起きてはいない。 「ごめん。ほら、今日は出張と接待があったから……」 円香は平八郎から顔を背けた。 「と、取り敢えず家に入るから……」 「今日、というか昨日。何の日?」 「え」 「何の日?」 もう一度円香が問う。  平八郎は思い出した。昨日は結婚記念日だった――。しかし、昨日は正確には結婚してから初めてデートをした記念日。 他にもお付き合い記念日と初デート(付き合ってからの)記念日と初同棲記念日と家電や車の購入記念日がある。
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