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 平八郎は押し入れから、一つ段ボール箱を引っ張り出すと、ガチャガチャとその中を掻き分けてスーファミを取り出した。  そして配線を全て繋ぐと、再びテレビの電源を入れた。  現代の20インチ液晶ワイドテレビに、レトロな低ドットのグラフィックが鮮明に映し出される。 20世紀の技術と21世紀の技術の融合だ。当時はテレビそのものが高価な家電であったため、15インチのブラウン管テレビが子供部屋にあるというだけで友達に自慢ができた時代だった。  今は薄型省スペース設計の液晶テレビでゲームができる。平八郎はかつて子供の頃には絶対に出来なかった夢のような環境を実現しているせいか、なんだか贅沢な気分になった。  現代とは20年前の人から見れば夢のまた夢の世界、200年前の人から見ればまるで全てが魔法のようにしか見えない世界だ。 平八郎は日本の技術の進歩と伝統の継承と文化の繁栄に内心でこっそり感謝した。  しかし、映し出されたタイトル画面の、ゲームの製作年は2012年と表示されている。 企業名もお馴染みのものとは全く違っていたが、平八郎はそんなことには気にも留めず、スタートボタンを押した。
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