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「芹沢さん、ありがとうございます」
私はお団子を口に頬張りながら言った。
「いや、礼を言われるような事はしてない」
芹沢さんはお茶を飲むと私のほうを向いた。
「前から気になっていたんだが…君はどうして剣術を?」
「…それは…私なりの恩返しです。」
「恩?」
芹沢さんは不思議そうな顔をした。
「最初は…ただ皆んなが一所懸命に励んでいるのを見ていたので好奇心から無理を言って剣術を教えてもらっていました」
「けど、成長するにつれて私はみんなに護られて生きてきたんだと…わかるようになりました。」
「家族同然に育ててくれた近藤さん。なにもわからない私に優しくしてくれた総司。優しい近藤さんに代わって叱ってくれた土方さん…受け入れてくれた試衛館のみんな…」
「…この剣術で今度は私がみんなを護るんだと心に決めました。だから私は女を捨てて侍になりに京に来たんです。」
「…強いな…」
芹沢さんがなにか呟いたが聞こえなかった。
私はもう一本の団子を口に頬張り、あらためて自分の事を考えた。
私は一体誰の子供として生まれてきたのだろう…
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