岡田以蔵

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総司の方に向かおうと脚を動かすと高い金属音が鳴り響き、刀の刃が宙に舞い地面に突き刺さった。 「…凛の事が気になるのなら…この俺を斬ってから好きなだけ詮索しろ。」 俺…? 総司の一人称は“僕”なのに… 「ヒュウ♪…かっこいいじゃん。なに?お前を斬れば何してもいいの?」 「斬れるもんならな」 総司は刀を握り直し、男に向かっていった。 男は刀の刃がほとんど無いはずなのに総司に対して余裕な態度をみせている。 男は総司の攻撃を折れた刀で受け止めた。 「刃が無くても柄があれば十分戦えるんだよ」 背筋に冷たいものが伝った気がした。 この男…戦い慣れしている… 私も参戦した方が… そう思って小刀を握った時だった。 「うあっ…!」 男の肩から血が流れ出た。 ほんの一瞬だった。 総司は得意な突きで男の利き腕の肩を見事に斬った。 男はふらつき、刀を落としてしまった。 総司は男の刀を蹴って後方に飛ばし、刃を首につきつけた。 ドクン… 総司が人を殺す…? ドクン… 心臓がうるさい。 「…死ね」 そう言って刀を振り上げた。 いけないっ…総司をこの状態で人を斬らせちゃ駄目だ…っ!! 「駄目ぇっ!!総司っ!!」 私は総司の後ろから抱きつき、刀を持つ腕を押さえた。 「……離して」 総司は私を振りほどこうと力をこめる。 「ここで人を殺しちゃ駄目…総司が総司じゃなくなっちゃう気がするっ…!!」 私の目から涙がこぼれた。 「凛…?」 泣いてることに気づいた総司は我に返った。
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