岡田以蔵

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辺りをみると夕陽が照らしていて橙色になっている。 暗くならないうちに凛を探さないと… 凛を探しながら昔の事を思い出す。 上京する前、凛は落ち込んだり悩んだりしている時はいつも決まった場所にいた。 夜になると蛍が飛び交う河原。 水がとても綺麗で流れが穏やかだったので幼い頃、夏によく遊んでいた。 そして…その場所は凛が初めて僕に歌を歌ってくれた場所でもある。 記憶がなかった凛が唯一覚えていた歌を… 僕だけが全ての歌詞を知っている。 僕と凛だけの秘密。 そして最近、京の街を散策していたらあの場所と似た河原を見つけた。 凛がその河原を知っているかはわからないけど僕の脚は自然とその河原に向かっていた。 …見つけた… 僕の勘は当たり、凛は河原にいた。 凛は大きな岩に座って脚をぶらぶらさせながらうつむいていた。 「凛」 僕が声をかけると一瞬だけ肩をびくっと震わせ、僕の方に向いた。 「…!?総司…なんでここに…」 「なんとなくだよ。ここはあの場所に似ているから…」 「うん…この前見つけたの。でもあの場所にはこんな大きな岩は無かったよね」 凛は自分が座っている岩を手のひらで軽く叩いた。 「…さっきはどうしたの?」 「…ああ…くだらないことだよ」 僕は凛の隣に座った。 この岩は思った以上に大きくて、僕と凛の2人が座ってもまだ余裕がある。 「なに?話してよ」 「…私って…ここにいる意味あるのかな…」 「え……なんで?」 全く予想していなかった言葉を言われて僕は一瞬理解できなかった。
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