セカイ

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「またね、雛子ちゃん」 「…ばいばい」 何気ない会話、当たり前の光景だと誰もが思うだろう。 だけど、私にとっては何気なくも当たり前でもない。 私にとっては奇跡以外、なにものでもない。 部活に向かう少女の姿が見えなくなってもまだ手を振り続ける。 半年前、私はまだ1人だった。 学校へ行くときも、休み時間も、お弁当のときも、家に帰るときも、家に帰ってからも、ずっと。 ある日、屋上で“彼”と出会い、公園で子犬と出会い、私は1人じゃなくなった。 クラスで声を掛けてもらえるようになったし挨拶だって返せるようになったし友達もできた。 半年前の私には考えられないこと。 心の隅で憧れて、でも強がって隠して諦めていた日常。 それが今、私の目の前にある。 私は幸せだった。
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