セカイ

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「雛、まだ残ってたのか?」 見つめていた教室のドアから、別の誰かが入ってきた。 「…山崎くん」 山崎悠太。私の恩人。 暗闇の中でうずくまっていた私に手を差しのべてくれて、幸せな生活をくれた人。 感謝してもしきれない人。 「部活は、いいの…?」 確かサッカー部に所属していて、1年生なのに既にレギュラー入りしているくらい上手いらしい。 春香ちゃんがそう言ってた気がする。 「今日は休みなんだ。それより、結構クラスに慣れてきたみてぇだな!」 そう言って私の髪をぐしゃぐしゃっと撫でる。 「う、うん。山崎くんのお陰だよ。私、今すごく楽しいよ!だって…」 あの日以来、人が怖くなって中学3年間で人と話した記憶がない。 そんな私が今こうして普通に話しているなんて。 幸せすぎて涙が出てきた。 「おいおい、泣くなよ(汗)」
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