序幕-Monster-

5/10
前へ
/92ページ
次へ
 昆虫人間は完全に囲まれた。女性を庇うように立っている。羽の鳴らす音が一層激しくなった。  その様子を伺うと、囲んだ全員が一斉に腰のホルスターから銃を引き抜いた。黒光りする、近未来的なデザインの銃だ。 「発射」  合成音声が響いた。誰から発せられたかは分からない。その声に続いて全ての銃からレーザーのようなものが発せられる。  それに反応した昆虫人間は、物凄い跳躍力で空を舞い、彼らの後ろに回りこんだ。  後ろを振り向くと、昆虫人間は既に消えていた。 「逃げられたか、追うぞ」  液晶画面の顔文字が不機嫌な顔に変わっている。 「佐藤さん、この女どうします」  女性の近くに立つ者が言った。  佐藤と呼ばれた液晶画面付きが振り向いて答えた。 「処分しろ。あいつを見た者は処分だ」 「了解」  引き金近くのボタンを押すと、「キルモード」と銃から合成音声が鳴る。  裏通りに響いた破裂音が、街の人の声に掻き消された。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加