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昆虫人間は完全に囲まれた。女性を庇うように立っている。羽の鳴らす音が一層激しくなった。
その様子を伺うと、囲んだ全員が一斉に腰のホルスターから銃を引き抜いた。黒光りする、近未来的なデザインの銃だ。
「発射」
合成音声が響いた。誰から発せられたかは分からない。その声に続いて全ての銃からレーザーのようなものが発せられる。
それに反応した昆虫人間は、物凄い跳躍力で空を舞い、彼らの後ろに回りこんだ。
後ろを振り向くと、昆虫人間は既に消えていた。
「逃げられたか、追うぞ」
液晶画面の顔文字が不機嫌な顔に変わっている。
「佐藤さん、この女どうします」
女性の近くに立つ者が言った。
佐藤と呼ばれた液晶画面付きが振り向いて答えた。
「処分しろ。あいつを見た者は処分だ」
「了解」
引き金近くのボタンを押すと、「キルモード」と銃から合成音声が鳴る。
裏通りに響いた破裂音が、街の人の声に掻き消された。
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