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半分が瓦礫の山と化した噴水に、多くの野次馬が集まってきた。
テレビの演出かと言う者もいれば、テロだと騒ぎ出す者もいた。辺りは一時騒然としていた。
「えー、ゴホン。皆さーん、霧枝重工人民保全局です、危ないので離れてくださーい」
ビルに出来た大穴から佐藤が出て来た。残った片腕だけで大きく手を振って、注目するようサインをしている。
急に聞こえてきた合成音声と、この奇怪な格好の人物に、野次馬達はさらに騒ぎ出す。
「なにあれ、コスプレ?」
「やっぱりテレビだよ、テレビ。カメラはどこかな」
「霧枝重工人民保全局? 聞いた事がないな」
そんな中、佐藤は手を振るのを止め、静かに手を下ろす。それが合図だったのか、背後からぞろぞろと仲間達が出きた。一人だけ大きめのアタッシュケースを持っている。
「例の物です」
「ご苦労」
佐藤にアタッシュケースを渡すと、足早に野次馬達の背後へと向かって行く。それを確認した佐藤は、アタッシュケースを地面に置くと、もう一度大きく手を振った。
「皆さーん、局員達の指示にしたがってください。すぐに安全な場所へ連れて行きまーす」
言い終えると同時に、屈んでアタッシュケースを開ける佐藤。内部には、先端がガトリング砲になっている腕が入っていた。
それを佐藤は、戸惑いなく取り出し、右腕の断面に取り付ける。
そして、野次馬へと構える。
「絶対に安全な、あの世にね」
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