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ビル、アスファルトの地面、交差点、車、行き交う人々。
そんな言葉で埋め尽くされているのが、ここである。
県で最も人口が多いのがこの町は、日中はサラリーマンや主婦、暇をもてあました大学生などで溢れかえっている。
そんな中に、一人の青年が立っていた。
彼はただ一人、誰かと待ち合わせをしているわけでもないのに、空を見上げたまま其処から動こうとしなかった。
まるで其処が彼にとって何か重要な役割があるかのように。
彼の名前は時雨雨竜(ときさめ うりゅう)。
18歳で高校三年。
身長は183cmと日本人にしては大きいほう。
体重は72kgと、この身長に対して丁度いいくらい、もしくは少し少ないくらいだと思われる。
20××年の8月2日、午後1時11分といえば水曜日。
平日のこんな時間から学生が町をうろうろしている場合ではないと思われるが、しかし今は夏休みの真っ最中なのである。
高3ならば受験があるだろうと、まぁ当然の考えに行き当たるが、彼は進学しない。
就職にもそれなりの準備が必要となるが、彼は実家を継ぐことになるので、それも対して必要が無い。
よってこの時間帯、彼は非常に暇になるのだ。
「あの、ちょっといいかな?」
そんな雨竜に声をかける人物がいた。
ぱっとみ二十歳かそこらの女性だ。
ライトブラウンでショートボブ、目はパッチリと大きく、顔は整っている。
服装は某鼠の国のキャラTシャツに片足が短い紺のジーパン、そしてサンダル。
自分に自信を持っていそうな雰囲気をかもし出している彼女は、体を前に折り首を横にかしげ、雨竜の顔を覗き込むようにしてみている。
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