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「・・・・なにか?」
対する雨竜はそっけなさ満点だ。
町へ出るとこういった類の絡まれ方はよくあるので、彼もだんだん対処法が分かってきていた。
時雨雨竜はかなりもてる。
容姿が整っているのもそうだが、それ以上に彼の大人びた雰囲気が女性をひきつけるようだ。
特に青色の瞳はポイントが高いと、彼の隣の席に座る女子生徒が言っていた。
「えっと、暇そうにしてたみたいだけど・・・・。もしかして待ち合わせでもしてるの?」
雨竜のそっけなさを感じて、女性の方も少し控えめに話しかけている。
だがしかし、その言動からは雨竜を気遣う節はまったく見られずに、待ち合わせなんてしていないことは分かっているのよといわんばかりの雰囲気が漂っていた。
「いえ、特に・・・、空を見ていただけですから」
雨竜の感性は人とは少しずれているのか、彼がする行動は偶に笑われることがある。
この間のことだ、授業中に空を見上げていると友達からこういわれた、まるで空に恋してるみたいな顔だなと。
対して面白くも無い台詞だが、何故かクラスは笑いが巻き起こっていた。
そして雨竜はすこし不機嫌になるのだ。
「ほんと?じゃあさ、このあと時間とか空いてるかな?良かったらそこのお店でケーキでもどう?」
だから、雨竜はこういった類の女性が嫌いだ。
待ち合わせはしていないが、空を見ていた。
空を見ているのが何故暇なことに繋がるのか、彼にはまったく理解できない。
実は雨竜、空を見上げて何かを考えるのが好きなのだ。
「いえ、結構です」
ばっさりと、まるで取り付く島が無い返答に女性の表情は一瞬固まる。
まさか断られると思ってなかったのだろう、以外という表情を隠そうともせずに、彼女はまだ雨竜の顔を覗き込んでいる。
「え、えっと・・・・。あ、ケーキがやだったかな?じゃあほかの・・・・」
「結構です」
次は女性の言葉の途中で、雨竜は拒絶をあらわした。
流石に言葉を切られたことで、自分に対して拒否を訴えているのがわかったのか、女性は明らかにまずいという顔をしていた。
そして、そんな女性を他所に雨竜はため息をつく。
「・・・・それでは」
「あ、ちょ・・・・・」
女性が何かを言っていた様だが関係ない。
雨竜は気分を害されたとばかりに、その場を後にしたのだった。
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