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エリシアがそのことに気が付いたのは、特に大きな木の横を通ったときだった。
「あれ・・・、なんか、変?」
そろそろポルック村も見えてくるというところ、この辺りに来ると温泉の匂いがしてくると教えてもらっていたが、それとはまるで違う妙なものが辺りに漂っていた。
それは硫黄臭のようなものではなく、もっとどろっとした生臭い、エリシアが今まで経験してきた中で一番嫌なタイプのにおい。
妖精族の中でも森との仲が深いのがエルフ族である。
その中で、水の女神の加護を受けているエリシアには他のエルフとは違うものが感じ取れるときがある。
特に、巨木や河川が近いときなどに顕著に訪れるその反応、エリシアは水の性質を感じ取れる能力と呼んでいる。
混じりけの無い100%純水なんてものは自然界には存在しない。
それこそ水は様々なものをその中に含み、それらを纏めて遠くまで運ぶ。
そうした水に含まれているちょっとした物などを敏感に感じ取れるのがエリシアだ。
いつもはそれを使い、上流にどんな生き物や樹木があるのか、何処の水が作物にいい影響をもたらすのかなどを調べている。
そのおかげで、温泉が近くにあるときは彼女は他のエルフよりも敏感に感じ取れる。
「これは、・・・・硫黄じゃない」
だから、エリシアにはこの付近の樹木が吸い上げている水が温泉の近くにあるものではないことが分かった。
そしてそれは、彼女にある一つの異常を告げていた。
「ちょっと、急いでみようかしら。・・・・いやな予感がするわ」
森と仲がよいエルフの中で、水場に特化したエリシアの勘というものは、こういう時にこそ当たる。
そのことを自分でよく知っている彼女は、鼻歌交じりの歩きを中断。
勢いをつけて木の上に飛び乗った。
そして巨木の枝を足場にし、まるで忍者のように、まるで空中を駆けているかのように、速度を上げて進んでいった。
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