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「これは、・・なんて酷いことを・・・ッ!」
嫌な予感を覚えたエリシアが、速度を上げて進み始めてから数分。
確かにポルック村に近いところにいた彼女は、たいして時間もかからずに森を抜けた。
自分の嫌な勘が外れて、森を抜けた先に待っているのは暖かい温泉の湯気と、そして笑顔の村人。
そんなことを思っていたからか、その光景には吐き気すら覚えた。
「村が・・・全滅だなんてっ!」
そこにあったのは、殺戮の現場だった。
森の奥にありながらも、そこはなかなかに裕福な村だったのだろう。
村の入り口にあったと思われるアーチや、村を獣から守るために必須な囲いを見てもそれは明らかだ。
それらは全て、破壊されつくされていた。
「・・・・・・ッ!」
村の入り口だけを見てもどうなったかは明らか。
しかし、まだ何処かに生存者がいるのかもしれない。
そんな希望を持ち、エリシアは村の中へと足を踏み入れた。
そんな彼女を待っていたのは絶望の二文字。
強靭な木をふんだんに使い、外から見ても頑丈に作られていたはずの囲いが力任せに破られていたことから、そうとうな力を持った魔物がいたことは予想できる。その結果、村人がどのような末路をたどったのかも。
村の中には生存者など一人もいなかった。
囲いの中にあったのは破壊されつくされた家屋、ばらばらに食い千切られ見るも無残な村人の死体。
そして血に染まりながらも湯気を昇らせている温泉だった。
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