始まりの章 プロローグ その1

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 「ふぅ、こんなものかしらね・・・?」  まさに怒涛という二文字が相応しい。  死人に囲まれたエリシアは全力でこれに抵抗、しかし思いのほか脆く、彼女が全力を出し切る前に死人は全滅した。  それこそ、細胞の一欠けらも残さずに。  背後に数十本の水の槍を並べた彼女の攻撃は単純。ただその槍を死人に向けて射出しただけだ。  その一つ一つが、一体何処からこんなに集めたんだといわんばかりに、とても膨大な量の水を圧縮したものである。  それが死人に当たり炸裂すると、まるで爆発が起きたかのようにその周りが吹き飛んだ。  後に残ったのはバラバラになった死人の破片、もしくはぺしゃんこにつぶれた死人のみ。  死人十数体に対し、射出された水の槍は五本。  それが引き起こした効果は凄まじいものがある。  エリシアがきたときに悲惨な状況だった村だが、彼女の攻撃の後では村があったことすら分からないほど、周囲は破壊されつくしていた。  身を守るためとはいえ、これはやりすぎである。  「あとは、残る村人の魂送だけど・・・・要らないわね」  魂送というのは、その名の通り魂をあの世に送り届けることだ。  死してなお生にしがみつくのが死人なら、死してなおその事実を受け入れられずにその場に留まるのが俗に言う幽霊である。  魂送はその幽霊を専用の魔法であの世に送ることである。  要は自分が死んだということを受け入れさせればいいのだ。  それ専用の、旅人ならば必須である魔法は、幽霊に自分が死んだ映像を無理やり思い出させるもの。  これにより彷徨っていた幽霊は、自分が死んだことを嫌でも自覚し、そしてあの世へ旅立っていくのだ。  死人化した村人の他にも、死んでしまった村人はたくさんいたように見えた。  本来なら少し規模の大きい専用の魔法を発動するとこのなのだが。    村が消滅してしまったことにより、周りにいた幽霊は死を自覚せざるを得なかったようだ。  全員あの世へ旅立ってしまっていた。  「なんか、複雑ね・・・」  村が壊滅していたときは憤慨したものの、村を消滅させたのが自分だと思うと、なんだかやるせない気持ちになったエリシアだった。
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