瘡蓋は剥がれて膿み始めた

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けれど頬に涙は流れない。 俺に寄りかかることも泣くことも、どうしてお前は自分に許さないのか。 俺はそのために傍にいるのに。 そんな罰を自分に科すほどお前が何を犯したというのだろう。 「明伎」 うつむく明伎の顔を両手で上向かせる。 膜を覆う涙で濡れた瞳に、俺は映っているのか、分からない。
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