最愛の人を秘密が隔てる

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「おはよう、兄さん」 早朝の日差しが目に痛いくらいのリビングに兄さんが入ってきて、キッチンで食器を洗っていた私は笑顔で声をかける。 「明伎、」 「大丈夫だよ」 兄さんが何を言おうとするのか、名前を呼ばれただけで察してしまえたことが、少しうれしい。 兄さんとの距離が以前とは違う証。 「ありがとう。兄さんのおかげで、落ち着いた」 いつも通りの軽い空気を作りたくて、手元で真っ白に皿をくるむ泡を濯ぎ落としながら。 「久しぶりの大雨だったから、ちょっとびっくりしただけ」
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