罪でも罰でもなく、償いに似せた逃避

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両親が離婚してから、二人がどこで暮らしているのかは知らされていなかった。 雨の日に必ず母から電話がくるようになったのはこの数ヶ月。 それは母も同じこの雨の下のどこかに居るということ。 自分はこの町に来ている、そう私に教えているのだ。 兄さんは知らない様子だから、母は兄さんには連絡をしていない。 昔から兄さんを最も愛しんでいた母が、兄さんではなく私だけに電話を入れる意図はひとつだ。 …兄さんに知られることは許さない、と。
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