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「――見つけたわよ明伎」
突然鮮明に聞こえた声は、耳元の携帯からではなかった。
それまで電話に気を取られてうつろだった視界の、ようやくその姿に気づいて。
「――…!」
映像が一瞬にして現実味を帯びる。
さらりと耳元から携帯電話を離した彼女はまるで、整然と引かれた一本の線上を歩いているように。
色の乏しい地面にひと際鮮やかな深紅のヒールがカツンと、私のつま先三つ分の位置で音を奏で終えた。
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