産声をあげたのは命じゃない

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『狡猾なことよね。自分は浮気された被害者になって有利に連をつれて行こうとするのよ』 こんな話を口にしながらその顔に笑顔が張り付いている母を想像できて、ぞくりと寒気がする。 そして、くすくすと鳥のさえずりを思わせる笑い声で。 『だから、産んでやったの』 「…っ!」 ああ、幼いころから必死に取り繕ってきた縫い傷を、いままた暴かれる。 私と両親との間にある『絆』。 母が自分を産み、父が自分を疎んでいる理由。
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