手を放した。自由になってと。

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玄関の戸を開いて出てきた川上先生が、私と裕司郎の様子を目にした瞬間に顔色を変えた。 「何かあったの…!?」 「あとで話すよ」 自力でまともに立つ気力を失った私を、両腕に抱き上げていた裕司郎が、先生にそれだけ言って玄関を上がる。 3LDKの広い室内を慣れた様子でまっすぐ寝室へと進み、先生も戸惑いながらあとに続く。 裕司郎の腕が繊細に私を気づかいながら、白いベッドの上へと横たえてくれた。
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