手を放した。自由になってと。

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がらんと音さえ聞こえる、とたんに広さを増した部屋で、思う。 静かな部屋を寂しいと感じられるなら、私は決して恵まれていないわけじゃない。 静寂に慣れないくらい私を孤独にはさせない、誰かがいつも私にはいるいうこと。 先生や裕司郎がどれほど私を救ってくれたか。 優しい人たちが私の支えになってくれている。不幸だなんて泣くのは自惚れと同じで、ふたりに背を向けるのと同じだ。 …そう、わかっているのに。
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