清算の雨に傘はいらない

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窓を叩く音がして目を開く。 すっかり夜闇となった空から落ちた雫に、冷え切った窓は打ちつけられて泣いていた。 こんなタイミングで降り出すのだから、きっと雨は私の背中を後押ししているのだ。 最近頻繁に降っていた中でも最も激しい雨。 責めるように窓を叩きつけるその音の中にもう一度、兄さんの声が聞こえた。 『明伎』 裕司郎はとっくに兄さんと会っている頃だから、あの家に今兄さんはいない。 …いるのは。
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