ただ、君の幸せを願う涙

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「…っ、は、」 道沿いの溝に膝をついて胃の中のものを出し切る。屈みこむ背中を雨が容赦なく打ちつけた。 息切れを起こしながら手の甲で口を拭って立ち上がり、力の入らない両足で水に埋もれている道を再び歩く。 地に弾ける雨は母の元へ行けと足を追い立てるようだ。 水を吸い込んだコンクリート塀のじとりと嫌な感触に手をつきながら、雫が次々と地に弾ける音の中掻い潜ってくる『声』を、何度も振り払い歩いていた。
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