ただ、君の幸せを願う涙

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「…兄、さん」 兄さんの夜色の瞳が、私の目を捉えて。濡れてしなだれる前髪の奥で、静かに細められる。 兄さんのその動作ひとつに、身体がびくりと震えて強張った。 あの目。いつか見たことがある。 『あの頃』と同じ目だ。 今そこにいるのは、私を突き放し嫌悪していたあの頃の兄さんだ。
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