ただ、君の幸せを願う涙

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「兄さんには分からない…っみんなに助けられて生きるしかない罪悪感を、助ける側に回れるほど恵まれた兄さんにどう理解できるの?」 生まれて初めて、兄さんに向かって声を荒げ、逆らう。 どろりと粘る黒い感情に嘘は一つもなくて、自分をひどく嫌悪しながら。 「分かってもらおうとも思わないよ、だって生まれたときにもらったものが違うんだから! 兄さんが当たり前に持っているものは当たり前なんかじゃない!」 ああ私は心のどこかで、ずっとこんな醜いことを思っていたのか。 何を手放してでも胸の奥深くに守ってきた最後のひとつが、とうとう壊れてしまった。
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