ただ、君の幸せを願う涙

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こんな醜い姿を兄さんが見ているなんて、これ以上の絶望なんかない。それでも、心に空いた穴から吹き出す汚濁が止められない。 兄さんが最後に覚えている強い私で終わりたかった。そうすれば思い出のなかでだけは綺麗な私のまま、兄さんの胸の奥で生き続けられた。 「俺の過ちを…今度はお前が繰り返すのか」 かつて私を切り捨てようとしたことを過ちと言った兄さんに、私は首をふる。 「兄さんのほうが正しかったんだよ」
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