ただ、君の幸せを願う涙

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「…ふざけるな…!」 押し殺されて微かに震えた言葉に、ハッと息を呑む。 冷たく淡白なだけだったそれまでの兄さんに、初めて感情が帯びていた。 突然私の肩を掴み、背中から力まかせに壁へ叩きつけて。 「いいかげんにしろッ!!」 怒鳴り声に、私はびくりと委縮する。 肩を掴んでぎりぎりと皮膚に埋没する兄さんの指が、心臓の奥にまで食い込んだかのように私を硬直させた。
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