帰るところ、待ってくれる人

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川上先生のマンションのエントランスまで送ってくれた兄さんとは、そこで別れた。 「母さんと相談して、日が決まったら連絡する」 「うん」 その言葉を合図に、繋いでいた手をどちらともなく放す。 それは自分の手そのものだった温度が欠けた喪失感と、放した手のなかで残されたものに気づいた瞬間でもあった。 兄さん。次に会うときは、お別れだ。
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