帰るところ、待ってくれる人

6/19
前へ
/572ページ
次へ
(…こんなふうに、なれていたのかな)  兄妹と両親、ありふれた家族にもしもなれていたらこんなふうに。 水にぬれて冷たいはずの身体なのに、温かいもので中が満たされて。 どこかでずっと張り詰めていた糸がやっと緩んでいく、ように。 「…どうしたの、」 私の顔を拭っていた先生が気づいて手を止める。嗚咽で歪んでしまいそうな顔を、少し前の私なら隠して笑おうとしただろう。
/572ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加