帰るところ、待ってくれる人

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「わ…たし…がんばれたの、かな…?」 「がんばったよ」 最後はふたりの声がそろって返ってきて、私はもう声を抑えることをやめた。   「うん…っ」 抱きしめてくれる先生の背中をぎゅっと掴んで、優しく撫でてくれる裕司郎に甘えながら、悲哀と不安と希望と幸福とでない交ぜになる涙が流れるままに泣き喚いた。 …今ここにいるのは、こんな未来があることに無知でいたあの頃の、やっと自分を信じる強さを覚えた、幼い子供だった。  
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