帰るところ、待ってくれる人

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そしてもうひとつ、兄さんは父に会いに行ったことを告げた。けれど父が住んでいるマンションへ行ったものの仕事で留守だったらしく、携帯にかけて会話をしたという。 兄さんが連絡をくれたことを手放しに喜んだそうで、母と共に海外へ渡ることを告げれば喉をうならせて気を落とした父に、兄さんは「帰ってきたら会いに行く」と言いおいたという。 母が面会を許したことと、まだ結婚指輪を手放してはいない、ということを伝えたかったのだ。 それを聞いた父はしばらくの沈黙ののちに「あいつと向こうでがんばりなさい」とだけ呟いて、そこで電話を終えたと兄さんは言った。
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