「さよなら、明伎」

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「…」 顔を上げてもう一度母を見上げた明伎の一礼を、無言で受け取った母は踵を返して先に歩き出した。 それを咎める気はなかった。今の一瞬で母の心の目に見えない変化を、きっと明伎も感じられただろうから。 「じゃあ、行くな」 「うん。また、ね」 それが今ここに在る、俺と明伎の最後の言葉だ。 俺は足元に置いていた荷物を持ち、母のあとを歩く。
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