あの頃未来だった場所で、あなたを待っている

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「あ、雨」 窓へ歩む私を目で追った裕司郎もそれに気づく。先生も同じ方を振り向いて、三人が一つの窓の雨に見入った。 窓の向こうの庭先はいつもと同じ青空を背負っていて、どうやら天気雨のようだ。 今の私にとって雨は、私のために泣いてくれたあのときの兄さんの涙だ。 心の傷を浸食し続けていたはずの雨なのに、今は思い出の中に兄さんを探す、唯一の救いにさえなっていた。    
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