「おかえり、兄さん」

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濡れた黒髪が目元を見え隠れさせ、雨粒が頬へと筋を描いて伝い落ちる。まるで涙のように綺麗だった。 私の時間がひとつ針を進める。 心臓が雨に負けない音で疾走する。 私が覚えている記憶の中の兄さんと、目の前の姿とが一つに重なる。 「…兄…さん…?」
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