「おかえり、兄さん」

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「…まだ、間に合うか?」 この雨に紛れてしまいそうなほどに囁いた兄さんは、眩しそうで。 まるで手の届かない何かを見ているように、目を細める。 「あの頃の気持ちは…ここにあるか?」 同じ声、面影を残していても、あの頃から流れ続けている時間は兄さんを変えていた。  私の覚えている兄さんはそこにはいない。 「俺の気持ちはお前にある…あの時預けたまま」 一歩、兄さんが踏み出す。ゆっくり、もう一歩。 今までの長い時間がこの距離であるかのように、一歩を私へと踏み出して、埋めていく。
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