「おかえり、兄さん」

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  「好きだった」 「にいさ、」 「どこで生きてても、何年経っても、苦しくてもずっと」 ずっと。 どこにいても、何年経っても、私の知らない苦しみをどれほど耐えて、乗り越えて、想ってくれていたのだろう。 「雨が降ったら…空を見上げていた」 ぽろぽろと、堪えようもなく落ちてしまった涙が、兄さんの胸に吸い込まれていく。 「お前が泣いて、呼んでる気がした」 「兄さん…っ」 兄さんにとっても雨は、繋がりだったのだ。 あの頃の私たちには、いつも雨が降り注いでいた。
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