「おかえり、兄さん」

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兄さんの腕と同じ力でその背を抱きしめ返しながら。 「明、伎…」 「おかえり、兄さん」   さよならのときから止まった私の時間と、さよならをしても進み続ける外の世界が、やっと歯車を噛み合わせてもう一度廻る。 「…っ、ただいま、明伎」 ただいま。 自分の居場所に帰ってきた言葉を、少し掠れた声で兄さんは言った。 ただいまーーーどこにいても、何年経っても、ここが私たちの、いつか帰ってくるところ。 私たちは、あなたと私で、生きている。
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