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「・・・・!!だ・・・か・・!?」
ん?
誰か男性の声が聞こえる。
知らない声・・・
だけど何故か懐かしくて暖かい。
その声の主は私の体を揺すっているようだった。
なんだか筋肉質なその腕は私の体を抱きしめているみたいだ。
私はその声のする方へ顔を向けて目を開けた。
そこには黒い着物を着て、刀を腰に差した漆黒の髪をひとつで束ねて、鼻筋が通って目の綺麗な、そう。漫画に出てくる様な幕末志士のような格好をした男性の顔が私の顔の近くにあった。
初めて見る顔なのに。
ずっと前から知っている気がする。
そしてその男性の事を私は愛している。
そしてその男性は私の事も愛している。
「アリサ!大丈夫か?こんなところで倒れてるんだからな、驚いたぞ」
男性が私にそう言った。
「仁太さん…私、眠ってたのかも」
私はその男性の事を仁太と呼んだ。
「そうか、最近長州も忙しくなってきたしな。お前を構ってやれなくてすまなかったな」
そう言って仁太さんは私を強く抱きしめてくれた。
「ううん、仁太さんに会えて嬉しい。あまり無理したら嫌だよ?」
私は強く強く彼の袂を握って彼に抱きついた。
そうすると彼は頭を撫でてくれ、そっとキスをくれた。
「お前の為にならどんな事でも耐えられる。お前が居てくれれば俺は輝いていられるんだ。愛してる、アリサ」
そう彼は言ってくれた。
なんだか私は心がとても穏やかで涙が溢れてきた。
こんな暖かい気持ちになったのなんてどれくらいぶりだっただろう。
私はこのままずっとこうしていたいと思った。
でも何故だろう、この人のことをこんなに知っているのは。
私は少し考えた。
自分の衣服も和服になっている。
部屋の中も和室で襖が開いていて庭が見える。
よくテレビの時代劇であるような日本庭園。松の木がそびえていて、池には鯉も泳いでいる。
太陽の日差しはサンサンと輝き、少し蒸し暑かった。
何かいつもの工藤アリサの日常とは違った。
でも何故か見知った景色。
そこで私はふと気付く・・・・
ここは夢の世界?
私の夢の世界・・・?
私の理想郷・・・
そして・・・・
私の理想の愛しい彼。
あぁ、もう夢でも良い。
このまま彼に愛されている私を感じていたい。
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