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「カオルー?どこー?」
ハルの声…
彼女の名前である春のように暖かくて優しい、ボクの大好きな声がする。
「あ、いた。
寝てたの?」
「ん、おはよう、ハル。」
そう言ってボクは寝ていたベンチから体をおこした。
「おはよう。って、いつも言ってるじゃん。ダメだよ、庭で寝たりしたら、風邪ひくよ。」
「…でも、今日ポカポカ。
あったかいから大丈夫。」
「もう。風邪ひいても知らないよー?
看病したげないからねー?」
ビュウ。
と、そのとき、少し強い春の風が吹いた。桜が舞う。
くるくる回って落ちてゆく。
「…なんか、変わらないね、カオルは。
変わらない、って私すごく良いことだと思うな。
私たち、子供の頃はよくここで二人とも寝ちゃってて、お母さんに怒られたよね。」
そうやってハルが、お日様みたいな笑顔で話すから、その心地よさに、ボクはまた眠くなってきた。
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