ラッサジの館にて

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  細く開けられた窓からの風が、ネワラの白い水鳥の羽根を揺らして、それがラッサの鼻先で揺れて何ともこそばゆい。 テーブルの上のカットグラスに赤い液体は注がれ、水の上とは違い、時間を於いて表面を水平にする。 「怪我した奴らの首尾はどうだえ?」 ネワラの膝で横になりながら、ラッサはグラスを口に運ぶ。 「ゼフが上手くやっているわぁ、あの人ああ見えて案外情が深いから。」 海賊の稼業は単純である。 目の前に、より多くの金を積んだ者に靡く。 その航海が終われば、依頼主との契約は切れ、その次の日には、前日までの依頼主と敵対する者と簡単に契約を結ぶ。 「世の中のしがらみを乗せたら、船は上手く動かないえ。」 ラッサの唇から赤い液体が垂れて、ネワラの白い太股を濡らした。 「黒丸と橙菱の連中はしがらみを船に乗せたが、わしぁ軽く行く、水鳥のように軽く行くえ。」 「でも、あの子達が戻って来たら、また船に乗せるのでしょう?」 ネワラはラッサの髪を撫で続け、蝋燭の火は小刻みに揺れている。 「それぁ、あいつ等が引くカードが決める、わしぁ、そのカードをみて自分の行動を決めるえ。」 丸いテーブルの二枚のカード。  天使のカードが一枚。 悪魔のカードが一枚。 「ふふ、どんなカードを引いたら、あの子達を拒否するのかしらぁ?」 ラッサの空のグラスに、白い指に包まれたボトルから、再び赤い液体が注がれた。 ラッサはそれを燭台の灯りがにかざして、小さな波を作った。 「ネワラ、わしの心の中ぁ探り過ぎだえ。」 小さな波は、鮮やかに赤い光を揺らし、揺れた光が、はにかんだ様なラッサの横顔を照らした。  
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