第十七章

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脚が進むまま走り続け、意識から完全に解離された体の動きで、僕は扉を強く開けた。 開けて勢いのまま倒れるように室内へ入る。 「…ツトム君!?」 机に向かっていた真美が音に気づき振り向く。 数歩踏み入れたところで失速し、がくがくとその場に倒れこんだ。 もう力は入らない。 荒く息をしながら床の冷たさをぼんやりと感じる。 真美が走り寄って僕の身体を揺さぶっている。 いつの間にか無意識で保健室に辿り着いていた。 あぁ、こうしてまた僕は、誰かに縋って生きようとしているのか。 全く、どうしようもない人間だな。 「ツトム君!?どうしたの?何があったの?」 「……真美、先生…っ、ごめ、…なさい…」 覆いかぶさるように僕を覗き込む真美は、不安そうな表情をしている。 こんな顔をしてくれ人が、まだ居たなんて。 僕は幸せ者だ。 そう、僕は幸せだから、もう僕のことは気にしないで。 君は充分僕に沢山のものをくれたんだよ。 だから大丈夫。 その分、目一杯君も幸せになっておくれ、ミツ。 運命なんて、本当にあるのかな。 未来はどうなるんだろう。 きっとミツは野球をずっと続けて、いずれ甲子園とやらに出て、プロの野球選手になるのだろう。 彼もそうなると信じて突き進んでいるし、そうなるに違いないと僕でさえ感じる。 じゃあ僕はどうしようかな。 僕には何ができるだろう。 君には何か僕の未来が見えていたのかな。 教えてくれていたのかな。 はっきりとは思い出せないけれど、 君が愛してくれた僕だ、 もう僕に不可能など、何もない。 僕は目を閉じた。 遠くからピアノの音と、小さな合唱が聞こえる。
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