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目を開けて見上げた天井は白く、カーテンに囲まれたベッドの上で
僕は荒く息を居ながら横たわっているのを自覚する。
そうだ、これで良かったんだ
君は何処かにいる、存在はしている
だけど目の前にはいない
そのことを証明するための、悲しい夢だったんだ
「…ツトム君?」
名前を呼ばれて気づき横を見ると、真美が居た。
覚醒するにしたがって彼女が僕の手を握っていることにも気づく。
「…ここは、病院。貴方は保健室で倒れて、吐いて、意識を失った。覚えてる?」
真美が発する言葉が頭の中に流れてこない。
未だ朦朧とする思考で、何とか此処が学校ではないことは悟った。
何が起こったのか問いかけようと口を動かすが、言葉が出てこない。
もどかしくて、握られた手に力を込めるしかできなかった。
それに応じるように真美もまた、握り返す。
「ねぇ、ツトム君。何があったの?」
「………」
「…まぁ、いいわ。落ち着いたらそれについては聞くけどね、君、引っ越し先決まってなかったのね?何で嘘ついたの?」
カーテンで囲まれた此処だけが孤立しているような不思議な感覚だ。
空気が一気に冷える気がした。
眉間に皺を寄せて真美が僕を睨んでいる。
何で、なんて、理由は僕も知らない。
そしてそれを伝えようにも僕は喋ることができなかった。
「どうするつもりだったの?」
「………」
「…話せないなら、一方的に言うけど、…閉校したらウチに来なさい。というか、もう手続き始めたからね。」
ため息をついているが、真美は握った手の力を緩めた。
「養子にっていうのは、難しいかもしれないけど、居候ってことにはできるでしょ。んーあたしも良くわかんないけど。とにかく、ツトム君の部屋の荷物は全部あたしの家に送るようにした。転校先もウチから通えるところで探してる。弟君は転校したばっかりだから転々とさせるのも可哀そうだし、申し訳ないけど彼が中学に上がるタイミングでウチに来る、っていう方向で嵐川君のご実家に連絡したわ。」
僕は淡々と話す真美を見つめるしかできない。
やっと何が起こっているのか理解できてきた。
そして理解でき始めると同時に大きな疑問が湧き上がる。
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