第十九章

3/6

205人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
環境が変わっても、僕の髪が緑色なのは変わらないし、 依然として痣は奇妙にも浮かび上がる。 変えられたのは考え方だろう。 悲観的になる必要なんてないんだと、僕は悟った。 いや、悟ることが出来るようになった。 すると自然と僕を取り巻く環境も変わっていくのだ。 面白くて仕方が無かった。 かつて気味悪がられていた僕が、クラスメイトと担任の推薦で、この春から高校の生徒会長になるのだ。 僕に何ができるかなんてわからない。 只言えるのは、「受け入れる」のだ。 見た目が違う?だからなんだ。 気に入らないことがあれば排除する?違う。 一旦包み込め。一方からしか見えない、なんてことはない。 僕はそうして、再び歩くことが出来ている。 「失礼します。」 がらりと職員室の扉を開けると、担任が僕を見つけた。 歩み寄るとすると制止されて、彼は隣接している生徒指導室に手招きして誘導する。 40代前半だろうか、男気があるが茶目っ気もある体育教師だ。 「おう、山本そっち座れ。」 「はい。」 「良かったよまだ校内にお前が居て」 「生徒会の準備も、色々ありますから…」 机を挟んでパイプいすが4脚、僕は入り口側、担任は窓側に座る。 窓の外は運動場だ。 大きな桜の木の枝が覗いている。 「ま、察しはついてるとは思うが…、進路のことだ。」 「…はぁ。」 「お前、やっぱり就職希望か。」 手を組んで担任が乗り出す。 僕はなるべく、目を合わせないようにした。 2年生の半ばから始まる進路調査、僕は常に就職希望のみ記入して提出している。 「考え直せ。今からでも、お前ならどこにでも行けるんだぞ?」 「先生、そういう問題じゃないんです。」 「わかってる。山本の事情は聞いている。育てて下さっている方のことをお前が気にかけているのは、無理もない。」 「じゃあもう、いいじゃないですか。ただでさえ、生徒会長を引き受けてアルバイトができないんです。これで勘弁してください。」 座ったまま姿勢を正して、深く頭を下げた。 長期的に将来を考えるのであれば、大学に進学した方が就職先も選択肢が広がるのは事実。 この高校も進学校であるため、殆どの生徒は大学受験を控えている。 だが、高校卒業が一定のラインであるのも事実、 ならば今度こそ僕は、自立したかった。 こればかりは真美にもねじ伏せさせられない。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

205人が本棚に入れています
本棚に追加