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テーブルに広がる食卓、それらを囲んで3人で食事をとる。
食事が終われば、部屋に戻ることもあるし、
リビングでだらだらとテレビを観ることもある。
常に明るい室内。
音が流れる部屋。
あぁこれが、家庭という、ごく普通の日常風景なのかと、
僕は毎日のように、この瞬間をかみしめていた。
「スリヤー、貴方は大学までいっときなさいよー。」
「つーか俺まだ高校にも受かってないよ?」
「だって今くらいから洗脳しとかないと、兄のように頑固になっちゃったら困るんだもん。」
「おいおい、ちょっとちょっと、真美さん、僕を見捨てないで…」
僕の台詞に真美はまた可笑しそうに笑った。
僕らの関係はきっと複雑で、
まだどこかで、真美のことは保険医のイメージが抜けていないし、
だけど一緒に暮らし始めてからは、母のような、姉のような、
時々友人のような、そんな関わり方だった。
きっとスリヤも同様だろう。
メルタニン学園が閉校になる時、
彼女が、深い理由も無しに僕達兄弟を引き取ることを決めた。
あの時は意味も分からず、だが抗う手段も分からなくて、状況に従うしかなかった。
こうして暮らしていることは、明らかに真美の負担であるはずなのに、
心の底から感謝する気持ちを止めることはできない。
そうそれは、いつの日か理想に描いては諦めていた、
幸せと呼べる日々なのだ。
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