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「入学と、寮の手続きには、親の了承が必要ですか?」
僕の甲高い声に、大人たちは振り向いた。
担任も、僕の声を聞いたのは久々だろう。
「そうだね、勿論必要になってくるね。」
「僕は、家を出たい。だから遠い学校に行って寮に入るのは、本当にしたいことです。
だけど、親の承諾は得られないと思う。彼は僕に無関心なようで、きつく束縛するから。」
場が静まった。
到底12歳の少年とは思えない、憎たらしい口調だったのだろう。
こちらとしても賭けだった。
大人たちは、無理矢理にでも僕を連れ去ってくれるのか。
ただ面白半分で適当に味見しようとしているだけじゃないのか。
スーツの二人は小声で話し合ったあと、
「わかった、必要最低限だけ書いてもらうかもしれないが、あとはこちらで上手いことしよう。
とにかく、我々は君を必要としていて、君がこちらに来たいと言ってくれている現状を崩すわけにはいかない。」
賭けには、勝ったことになるのだろうか。
それは予想していたのとは違う結果だった。
僕は泣きそうになった。
嬉しくて仕方なかった。
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